アプリケーションが大きくなるにつれ、それを複数のファイルに分割したくなります。いわゆる ‘モジュール’ です。通常、モジュールはクラスや便利な関数のライブラリを含みます。
長い間、JavaScript には言語レベルのモジュール構文は存在しませんでした。当初はスクリプトが小さくて単純だったため問題ではありませんでした。そのため、モジュールの仕組みも必要ありませんでした。
しかし、スクリプトが徐々に複雑になってきたため、コミュニティはコードをモジュールにまとめるための様々な方法を発明しました。
いくつか挙げます:
- AMD – 最も古いモジュールシステムの1つで、最初はライブラリrequire.jsで実装されました。
- CommonJS – Node.js サーバ用に作られたモジュールシステムです。
- UMD – もう1つのモジュールシステムで、ユニバーサルなものとして提案されています。AMD と CommonJS と互換性があります。
今や、これらはゆっくりと歴史の一部になっていますが、依然として古いスクリプトの中で利用されています。
言語レベルのモジュールシステムの標準は 2015 年に登場し、それ以来徐々に進化し、今ではすべての主要なブラウザとNode.js でサポートされています。なので、ここからはモダンな JavaScript モジュールについて学んでいきます。
モジュールとは?
モジュールは単なる1つのファイルです。
ディレクティブ export
と import
を利用することで、モジュール間で機能を相互にやりとりすることができます。:
export
キーワードは、ファイルの外部からアクセス可能であるべき変数や関数にラベル付けをします。import
は他のモジュールから機能をインポートできるようにします。
例えば、関数をエクスポートしているファイル sayHi.js
があります:
// 📁 sayHi.js
export function sayHi(user) {
alert(`Hello, ${user}!`);
}
…そして、別のファイルでそれをインポートして使います。:
// 📁 main.js
import {sayHi} from './sayHi.js';
alert(sayHi); // function...
sayHi('John'); // Hello, John!
import
ディレクティブは現在のファイルからの相対パス ./sayHi.js
のモジュールを読み込み、エクスポートされた関数 sayHi
を対応する変数に割り当てます。
ブラウザで例を実行してみましょう。
モジュールは特別なキーワードと機能を提供するので、<script type="module">
属性をを使用して、ブラウザにモジュールを扱うことを伝える必要があります。
このようになります:
export function sayHi(user) {
return `Hello, ${user}!`;
}
<!doctype html>
<script type="module">
import {sayHi} from './say.js';
document.body.innerHTML = sayHi('John');
</script>
ブラウザは自動的にインポートされたモジュールを取得/評価し、スクリプトを実行します。
file://
プロトコル経由で Web ページをローカルで開いた場合、import/export
ディレクティブが動作しないことに気づくと思います。モジュールをテストするには、静的サーバ のようなローカル Webサーバ、あるいは、VS Code のLive Server Extension のようなエディタのもつ “ライブサーバ” 機能を使用します。
コアなモジュールの特徴
“通常の” スクリプトと比較したときのモジュールの違いは何でしょう?
ブラウザとサーバサイト JavaScript の両方に有効なコアな特徴があります。
常に “use strict”
モジュールは常に use strict
です。E.g. 未宣言変数への代入はエラーになります。
<script type="module">
a = 5; // error
</script>
モジュールレベルのスコープ
各モジュールには独自の最上位のスコープがあります。つまり、モジュール内の最上位の変数や関数は他のスクリプトからは見えません。
下の例では、2つのスクリプトがインポートされており、hello.js
は user.js
で宣言されている変数 user
を使おうとします。が、別々のモジュールなので失敗します(コンソールでエラーが確認できます):
alert(user); // no such variable (each module has independent variables)
let user = "John";
<!doctype html>
<script type="module" src="user.js"></script>
<script type="module" src="hello.js"></script>
モジュールは、外部からアクセス可能にしたいものは export
を行い、必要なものは import
が必要です。
user.js
はuser
変数のエクスポートが必要です。hello.js
はuser.js
モジュールからのインポートが必要です。
つまり、モジュールでは、グローバル変数に依存するのではなく、インポート/エクスポートを使用します。
これは正しい例です:
import {user} from './user.js';
document.body.innerHTML = user; // John
export let user = "John";
<!doctype html>
<script type="module" src="hello.js"></script>
ブラウザでは、各 <script type="module">
に対しても独立した最上位スコープが存在します。
以下は同じページに2つのスクリプトがあり、両方 type="module"
です。これらはお互いの最上位のスコープの変数は見えません。:
<script type="module">
// 変数はこのモジュールスクリプトの中でのみ見えます
let user = "John";
</script>
<script type="module">
alert(user); // Error: user is not defined
</script>
ブラウザでは、e.g. window.user = "John"
のように、変数を明示的に window
プロパティに割り当てることで、ウィンドウレベルのグローバルな変数を作ることができます。
以降、type="module"
の有無に関わらず、すべてのスクリプトはそれが参照できます。
とはいえ、このようなグローバル変数の作成は、よく思われない行為です。このようなことは避けるようにしてください。
モジュールコードはインポート時の初回にのみ評価されます
もし同じモジュールが複数の他の場所でインポートされる場合、そのコードは初回のみ実行されます。その後エクスポートしたものはすべてのインポートしているモジュールで利用されます。
1度限りの評価は重要な結果をもたらすため、注意が必要です。
いくつか例を見てみましょう。
まず、メッセージを表示すると言ったような、副作用をもたらすモジュールコードを実行する場合、複数回インポートしてもトリガされるのは1度だけです(初回)。:
// 📁 alert.js
alert("Module is evaluated!");
// 別のファイルから同じモジュールをインポート
// 📁 1.js
import `./alert.js`; // Module is evaluated!
// 📁 2.js
import `./alert.js`; // (nothing)
モジュールはすでに評価済みなので、2つ目のインポートは何も表示しません。
ルールがあります: 初期化やモジュール固有の内部データ構造の作成には、トップレベルのモジュールのコードを使用する必要があります。複数回呼び出し可能にする必要がある場合は、上記の sayHi
で行ったように、関数としてエクスポートする必要があります。
より高度な例を考えてみましょう。
モジュールがオブジェクトをエクスポートするとしましょう:
// 📁 admin.js
export let admin = {
name: "John"
};
このモジュールが複数のファイルからインポートされた場合、モジュールは初回にだけ評価され、admin
オブジェクトが生成され、その後このモジュールをインポートするすべてのモジュールに渡されます。
すべてのインポータは正確に1つの admin
オブジェクトを取得することになります。:
// 📁 1.js
import {admin} from './admin.js';
admin.name = "Pete";
// 📁 2.js
import {admin} from './admin.js';
alert(admin.name); // Pete
// 1.js と 2.js 同じオブジェクトをインポートしました
// 1.js で行われた変更は 2.js でも見えます
ご覧の通り、1.js
がインポートした admin
の name
プロパティを変更すると、2.js
は新しい admin.name
が参照できます。
これがまさにモジュールが1度のみ実行されるためです。エクスポートが生成され、インポートする側でそれらを共有するため、何かが admin
オブジェクトを変更すると、他のインポートしたスクリプトはその変更が見えます。
このような振る舞いは、モジュールを 構成(configure) できるため実際に非常に便利です。
言い換えると、モジュールはセットアップが必要な汎用機能が提供できます。例.認証には資格(credential)が必要です。そして、外部のコードが割り当てることを期待した構成用のオブジェクトをエクスポートします。
これは古典的なパターンです:
- モジュールはいくつかの構成手段をエクスポートします。例.構成オブジェクト
- 初回インポート時にそれらを初期化し、そのプロパティへ書き込みます。トップレベルのアプリケーションスクリプトがそれを行うかもしれません。
- 以降のインポートでは、そのモジュールを使用します。
例えば、admin.js
モジュールは特定の機能(例. 認証など)を提供するかもしれませんが、外部から admin
オブジェクトにクレデンシャル情報が来ることを期待します。:
// 📁 admin.js
export let config = { };
export function sayHi() {
alert(`Ready to serve, ${config.user}!`);
}
ここで、admin.js
は config
オブジェクトをエクスポートします(初期は空ですが、デフォルトプロパティもある場合もあります)。
次に init.js
、我々のアプリの最初のスクリプトで、config
をインポートし、config.user
を設定します:
// 📁 init.js
import {config} from './admin.js';
config.user = "Pete";
…これでモジュール admin.js
は構成されました。
以降のインポートはこれを呼び出すことができ、現在のユーザが正しく表示されます:
// 📁 another.js
import {sayHi} from './admin.js';
sayHi(); // Ready to serve, Pete!
import.meta
オブジェクト import.meta
は現在のモジュールに関する情報を含んでいます。
この内容は環境に依存します。ブラウザでは、スクリプトの url、HTML 内であれば現在のウェブページの url を含んでいます。:
<script type="module">
alert(import.meta.url);
// script url (インラインスクリプトに対する HTML ページの url)
</script>
モジュールでは、最上位の “this” は undefined です
これはささいな特徴ですが、完全性のために言及しておきます。
モジュールでは、最上位の this
は undefined です。
this
がグローバルオブジェクトである非モジュールスクリプトとの比較です:。
<script>
alert(this); // window
</script>
<script type="module">
alert(this); // undefined
</script>
ブラウザ固有の特徴
通常のスクリプトと比べて、type="module"
を持つスクリプトには、ブラウザ固有の違いもいくつかあります。
もし初めて読んでいる場合、またはブラウザで JavaScript を使用していない場合はスキップしても構いません。
モジュールスクリプトは遅延されます
モジュールスクリプトは外部スクリプトとインラインスクリプト両方で、常に 遅延され、defer
属性(チャプター ページのライフサイクル: DOMContentLoaded, load, beforeunload, unload で説明しています)と同じ効果を持ちます。
つまり:
- 外部モジュールスクリプト
<script type="module" src="...">
は HTML 処理をブロックしません。 - モジュールスクリプトは HTML ドキュメントが完全に準備できるまで待ちます。
- 相対的な順序は維持されます: ドキュメントの最初にあるスクリプトが最初に実行されます。
副作用として、モジュールスクリプトは常にその下の HTML 要素が見えます。
例:
<script type="module">
alert(typeof button); // object: スクリプトは下のボタンが `見え` ます
// モジュールは遅延されるので、スクリプトはページ全体がロードされた後に実行します
</script>
以下の通常のスクリプトと比較してください:
<script>
alert(typeof button); // Error: button is undefined, スクリプトは下の要素は見えません
// 通常のスクリプトは、ページの残りが処理される前に即時実行します。
</script>
<button id="button">Button</button>
注意: 実際には1つ目のスクリプトの前に2つ目のスクリプトが動作します! なので、最初に undefined
が表示され、その後 object
が表示されます。
これは、モジュールが遅延されているためです。通常のスクリプトはすぐに実行するので、最初に出力されます。
モジュールを使うときは、JavaScript アプリケーションが準備できる前に HTML ドキュメントが表示できることに注意してください。一部の機能はまだ機能しない可能性があります。透明なオーバーレイ、または "ローディング"を配置する、もしくはそれ以外の方法で訪問者が混乱しないようにする必要があります。
Async はインラインスクリプトで動作します
非モジュールスクリプトの場合、async
属性は外部スクリプトでのみ動作します。Async スクリプトは、他のスクリプトやHTMLドキュメントとは関係なく、準備ができ次第すぐに実行されます。
モジュールスクリプトの場合、インラインスクリプトでも動作します。
例えば、下のスクリプトは async
があるので、何かを待つことはありません。
それは、たとえ HTMl ドキュメントがまだ完了していない場合や、他のスクリプトがまだ保留の場合でも、インポート( ./analytics.js
の取得)を行い、準備ができたときに実行します。
これはカウンタや広告、ドキュメントレベルのイベントリスナなど、何にも依存しない機能に適しています。
<!-- すべての依存対象が取得(analytics.js)され、スクリプトが実行されます -->
<!-- ドキュメントや他の <script> タグは待ちません -->
<script async type="module">
import {counter} from './analytics.js';
counter.count();
</script>
外部スクリプト
外部モジュールスクリプトには、2つの大きな違いがあります。:
-
同じ
src
の外部スクリプトは一度だけ実行されます:<!-- スクリプト my.js は一度だけ取得され実行されます --> <script type="module" src="my.js"></script> <script type="module" src="my.js"></script>
-
別のドメインから取得された外部スクリプトはCORS ヘッダを必要とします。言い換えると、モジュールスクリプトが別のドメインから取得された場合、リモートサーバはその取得が許可されていることを示すために、ヘッダ
Access-Control-Allow-Origin: *
(*
の代わりに取得するドメインを指定する場合もあります)を提供しなければなりません。<!-- another-site.com は Access-Control-Allow-Origin を提供しなければなりません --> <!-- そうでない場合、スクリプトは実行されません --> <script type="module" src="http://another-site.com/their.js"></script>
これにより、デフォルトでセキュリティが向上します。
ベア(剥き出しの) モジュールは許可されていません
ブラウザでは、import
は相対URLか絶対URLどちらかの取得が必須です。パスがないモジュールは “bare” モジュールと呼ばれます。このようなモジュールは import
では許可されていません。
例えば、この import
は無効です:
import {sayHi} from 'sayHi'; // Error, "bare" module
// モジュールは、例えば './sayHi.js' またはモジュールの場所でなければなりません
Node.js やバンドルツールのような特定の環境では、モジュールを見つけるための独自の方法や、それらを調整するためのフックがあるため、剥き出しのモジュールを使用することができます。しかしブラウザではまだベアモジュールはサポートされていません。
互換性, “nomodule”
古いブラウザは type="module"
を理解しません。未知のタイプのスクリプトは単に無視されます。それらには、nomodule
属性を使って、フォールバックを提供することが可能です。:
<script type="module">
alert("Runs in modern browsers");
</script>
<script nomodule>
alert("現在のブラウザは type=module と nomodule どちらも知っているので、これはスキップされます")
alert("古いブラウザは未知の type=module を持つスクリプトは無視しますが、これは実行します");
</script>
ビルドツール
現実には、ブラウザモジュールが “生” の形式で使用されることはほとんどありません。通常、それらを Webpack などの特別なツールを使って一緒にまとめて、プロダクションサーバにデプロイします。
バンドラーを使用する利点の1つは、それらはモジュールをどのように解決するかについてより多くの制御を与えることができ、CSS/HTML モジュールのようにベアモジュールやその他のことを可能にします。
ビルドツールは次のことを行います。:
- HTML の
<script type="module">
置くことを意図した “メイン” モジュールを取ります。 - 依存関係を分析します: インポート、インポートのインポート…など
- ネイティブの
import
呼び出しをバンドラ関数で置き換え、すべてのモジュールを1つのファイルにビルドします(もしくは複数のファイルにします。調整可能)。 - その過程で、他の変換や最適化を適用することができます。
- 到達不能のコードの削除
- 未使用のエクスポートの削除(“tree-shaking”)
console
やdebugger
のような開発固有の文の削除- 最先端の JavaScript 構文は、Babel] を使用して同様の機能を持つ古い構文に変換されます
- 結果のファイルの minify (スペースの削除、変数を短い名前に置換するなど)
バンドルツールを使用し、次にスクリプトが1つのファイル(またはいくつかのファイル)にバンドルされると、それらの import/export
文は特別なバンドル呼び出しに置き換えられます。したがって、結果として生じるビルドは type=module
を必要としません。なので、それを通常のスクリプトに置くことができます。:
<!-- Webpack のようなツールから bundle.js を得た想定 -->
<script src="bundle.js"></script>
とはいえ、ネイティブモジュールも使用可能です。したがって、ここでは Webpack を使用しません: 後で構成できます。
サマリ
まとめると、コアの概念は次の通りです:
- モジュールはファイルです。
import/export
を機能させるには、ブラウザは<script type="module">
を必要とし、それはいくつかの違いを意味します。:- デフォルトでは遅延
- 非同期はインラインスクリプトで動作する
- 外部スクリプトは CORS ヘッダを必要とする
- 重複した外部スクリプトは無視される
- モジュールは独自のローカルの最上位スコープを持ち、
import/export
経由で、モジュール間で機能をやり取りします。 - モジュールは常に
use strict
です。 - モジュールコードは一度だけ実行されます。エクスポートは一度生成され、インポータ間で共有されます。
したがって、通常、モジュールを使用するとき、各モジュールは機能を実装し、それらをエクスポートします。そして、import
を使って、必要な場所に直接インポートします。ブラウザは自動的にスクリプトを読み込み、評価します。
プロダクション環境では多くの場合、パフォーマンスや他の理由で、モジュールを1つにまとめるために Webpack などのバンドラを使用します。
次の章ではより多くのモジュールの例と、どのようにエクスポート/インポートされるかを見ていきます。