instanceof
演算子でオブジェクトが特定のクラスに属しているのかを確認することができます。また、継承も考慮されます。
このようなチェックが必要なケースは多々あるかもしれません。ここでは、その型に応じて引数を別々に扱う 多形(ポリモーフィック) 関数を構築するために使用します。
instanceof 演算子
構文は次の通りです:
obj instanceof Class
それは obj
が Class
(または、それを継承しているクラス)に属している場合に true
を返します。
例:
class Rabbit {}
let rabbit = new Rabbit();
// Rabbit クラスのオブジェクト?
alert( rabbit instanceof Rabbit ); // true
コンストラクタ関数でも動作します。:
// class の代わり
function Rabbit() {}
alert( new Rabbit() instanceof Rabbit ); // true
…また Array
のような組み込みクラスでも動作します。:
let arr = [1, 2, 3];
alert( arr instanceof Array ); // true
alert( arr instanceof Object ); // true
arr
は Object
クラスにも属していることに留意してください。Array
はプロトタイプ的に Object
を継承しているためです。
通常、instanceof
演算子はチェックのためにプロトタイプチェーンを検査します。この動きに対して、静的メソッド Symbol.hasInstance
でカスタムロジックが設定できます。
obj instanceof Class
のアルゴリズムはおおまかに次のように動作します。:
-
もし静的メソッド
Symbol.hasInstance
があれば、それ(Class[Symbol.hasInstance](obj)
)を使います。これはtrue
またはfalse
を返す必要があり、これでinstanceof
の振る舞いがカスタマイズできます。:例:
// catEat プロパティをもつものは animal と想定する // instanceOf チェックを設定 class Animal { static [Symbol.hasInstance](obj) { if (obj.canEat) return true; } } let obj = { canEat: true }; alert(obj instanceof Animal); // true: Animal[Symbol.hasInstance](obj)が呼ばれます
-
ほとんどのクラスは
Symbol.hasInstance
を持っていません。このケースでは、通常のロジックが使用されます:obj instanceOf Class
はClass.prototype
がobj
のプロトタイプチェーンうちの1つと等しいかをチェックします。言い換えると、以下のような比較を行います:
obj.__proto__ == Class.prototype obj.__proto__.__proto__ == Class.prototype obj.__proto__.__proto__.__proto__ == Class.prototype ... // いずれかが true の場合、 true が返却されます // そうでない場合、チェーンの末尾に到達すると false を返します
上の例では、``rabbit.proto === Rabbit.prototype` なので、すぐに回答が得られます。
継承のケースでは、2つめのステップでマッチします:
class Animal {} class Rabbit extends Animal {} let rabbit = new Rabbit(); alert(rabbit instanceof Animal); // true // rabbit.__proto__ == Rabbit.prototype // rabbit.__proto__.__proto__ === Animal.prototype (match!)
これは、rabbit instanceof Animal
と Animal.prototype
を比較したものです。:
ところで、objA.isPrototypeOf(objB) というメソッドもあります。これは objA
が objB
のプロトタイプチェーンのどこかにあれば true
を返します。なので、obj instanceof Class
のテストは Class.prototype.isPrototypeOf(obj)
と言い換えることができます。
面白いことに、Class
コンストラクタ自身はチェックには参加しません! プロトタイプと Class.prototype
のチェーンだけです。
これは prototype
が変更されたときに興味深い結果につながります。
このように:
function Rabbit() {}
let rabbit = new Rabbit();
// prototype を変更します
Rabbit.prototype = {};
// ...もう rabbit ではありません
alert( rabbit instanceof Rabbit ); // false
おまけ: 型のための Object toString
私たちは通常の文字列は [object Object]
という文字列に変換されることをすでに知っています。:
let obj = {};
alert(obj); // [object Object]
alert(obj.toString()); // 同じ
これが toString
の実装です。しかし、実際にはそれよりもはるかに強力な toString
を作る隠れた機能があります。それを拡張させて typeof
または instanceof
の代替として利用することができます。
奇妙に聞こえますか?たしかに。分かりやすく説明しましょう。
スペック(specification)によって、組み込みの toString
はオブジェクトから抽出し、任意の値のコンテキストで実行することができます。そして、その結果はその値に依存します。
- 数値の場合、それは
[object Number]
になります。 - 真偽値の場合、
[object Boolean]
になります。 null
の場合:[object Null]
undefined
の場合:[object Undefined]
- 配列の場合:
[object Array]
- …など (カスタマイズ可能).
デモを見てみましょう:
// 使いやすくするために toString メソッドを変数にコピー
let objectToString = Object.prototype.toString;
// これの型はなに?
let arr = [];
alert( objectToString.call(arr) ); // [object Array]
ここでは、コンテキスト this=arr
で関数 objectToString
を実行するため、デコレータと転送, call/apply の章で説明した call を使いました。
内部的には、toString
アルゴリズムは this
を検査し、対応する結果を返します。ほかの例です。:
let s = Object.prototype.toString;
alert( s.call(123) ); // [object Number]
alert( s.call(null) ); // [object Null]
alert( s.call(alert) ); // [object Function]
Symbol.toStringTag
Object toString
の振る舞いは特別なオブジェクトプロパティ Symbol.toStringTag
を使用してカスタマイズできます。
例:
let user = {
[Symbol.toStringTag]: 'User'
};
alert( {}.toString.call(user) ); // [object User]
ほとんどの環境固有のオブジェクトには、このようなプロパティがあります。これはいくつかのブラウザ固有の例です。:
// 環境固有のオブジェクトとクラスのtoStringTag:
alert( window[Symbol.toStringTag]); // window
alert( XMLHttpRequest.prototype[Symbol.toStringTag] ); // XMLHttpRequest
alert( {}.toString.call(window) ); // [object Window]
alert( {}.toString.call(new XMLHttpRequest()) ); // [object XMLHttpRequest]
ご覧の通り、結果は正確に Symbol.toStringTag
(存在する場合)で、[object ...]
の中にラップされています。
最終的には、プリミティブなデータ型だけでなく、組み込みオブジェクトのためにも機能し、カスタマイズすることもできる “強化された typeof” があります。
これは、型を文字列として取得するだけでなく、チェックするために、組み込みオブジェクトに対して instanceof
の代わりに使用できます。
サマリ
私たちが知っている型チェックメソッドについて再確認しましょう:
対象 | 戻り値 | |
---|---|---|
typeof |
プリミティブ | 文字列 |
{}.toString |
プリミティブ, 組み込みオブジェクト, Symbol.toStringTag をもつオブジェクト |
文字列 |
instanceof |
オブジェクト | true/false |
ご覧のように、{}.toString
は技術的には “より高度な” typeof
です。
そして、instanceof
演算子は、クラス階層を扱っていて継承を考慮したクラスのチェックをしたい場合に本当に輝きます。
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