2022年4月23日

組み込みのクラスを拡張する

Array、Map などの組み込みのクラスも拡張可能です。

例えば、ここでは PowerArray はネイティブの Array を継承しています:

// 1つメソッドを追加しています(その他のことももちろん可能です)
class PowerArray extends Array {
  isEmpty() {
    return this.length === 0;
  }
}

let arr = new PowerArray(1, 2, 5, 10, 50);
alert(arr.isEmpty()); // false

let filteredArr = arr.filter((item) => item >= 10);
alert(filteredArr); // 10, 50
alert(filteredArr.isEmpty()); // false

とても興味深い点に注目してください。filtermap といった組み込みのメソッドは、継承された型 PowerArray と同じ型の新しいオブジェクトを返します。そのために、内部の実装はオブジェクトの constructor プロパティを使用します。

上の例では、

arr.constructor === PowerArray;

arr.filter() が呼ばれると、内部的には Array ではなく、arr.constructor を使用して新しい結果の配列を作成します。結果に対してさらに PowerArray が持つメソッドを使用し続けることができるため、これは非常に有用です。

さらに、その振る舞いをカスタマイズすることも可能です。

特別な静的な getter Symbol.species を追加することができます。これが存在する場合、mapfilter などの場合に Javascript が内部的に使用するコンストラクタを返す必要があります。

もし、mapfilter のような組み込みのメソッドが通常の配列を返してほしい場合、次のように Symbol.speciesArray を返すようにします:

class PowerArray extends Array {
  isEmpty() {
    return this.length === 0;
  }

  // 組み込みのメソッドは、これをコンストラクタとして使います
  static get [Symbol.species]() {
    return Array;
  }
}

let arr = new PowerArray(1, 2, 5, 10, 50);
alert(arr.isEmpty()); // false

// filter はコンストラクタとして arr.constructor[Symbol.species] を使って新しい配列を作ります
let filteredArr = arr.filter(item => item >= 10);

// filteredArr は PowerArray ではなく Array です
alert(filteredArr.isEmpty()); // Error: filteredArr.isEmpty is not a function

ご覧の通り、これで .filterArray を返します。そのため、拡張機能はこれ以上渡されません。

他のコレクションも同様に動作します

MapSet などの他のコレクションも同様に動作します。これらも Symbol.species を使用しています。

組み込みでは、静的の継承はありません

組み込みのオブジェクトは独自の静的メソッドを持っています。例えば Object.keys, Array.isArray などです。

既にご存知のように、ネイティブクラスは互いに拡張しあいます。例えば、 ArrayObject を拡張しています。

通常、あるクラスが別のクラスを拡張する場合、静的メソッド、非静的メソッドの両方が継承されます。これは記事 静的(static)プロパティとメソッド で説明しました。

しかし、組み込みのクラスは例外です。組み込みのクラスはお互いから静的なプロパティを継承しません。

例えば、ArrayDate はともに Object を継承しているので、これらのインスタンスは Object.prototype のメソッドを持ちます。が、Array.[[Prototype]]Object を参照しないため、例えば Array.keys() (or Date.keys()) と言った静的メソッドは存在しません。

これは、DateObject の構造のイメージです:

DateObject の間に繋がりはないことに注目してください。ObjectDate は両方とも独立し、Date.prototypeObject.prototype を継承しているだけです。

これは組み込みのオブジェクトの継承と extends をして得られるものとの比較における重要な違いです。

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